最近、愛犬が元気な様子を見せず、食欲がなかったり、時には吐いたり下痢や震えなどの症状を見せることがありませんか?
「近頃、愛犬の元気がない」、「いつもなら喜んで食べるのに、なんだか食欲がなさそう」とお悩みの飼い主の方も少なくないかと思われます。
実は、元気がなく、何らかの症状を見せるとき、愛犬はケガや感染症などの病気を患っているかもしれないのです。
そこで今回は、愛犬に元気がない理由や諸症状、特に注意したい犬の病気について詳しくご説明していきたいと思います。
目次
2.犬に元気がなく、食欲不振である場合
2.1.犬に元気がなく、嘔吐や下痢を伴う場合
2.2.犬に元気がなく、食欲はあるが震えの症状がある場合
2.3.犬が震える主な原因とは?
2.4.嘔吐する原因と、『吐き出し』との違い
3.震えと元気のなさが伴う代表的な6つの病気
3.1.狂犬病
3.2.破傷風
3.3.低血糖症
3.4.脳腫瘍
3.5.犬ジステンパーウィルス感染症
3.6.椎間板ヘルニア
3.7.犬に元気がない場合、服薬は必要か?
1.愛犬に元気がない理由
いつもなら、飼い主の顔を見れば喜んで近寄ったり、遊ぼうとする愛犬がなぜかふさぎ込んでいたり、大好物の餌やおやつを与えても食べようとしないなどといった症状はありませんか?
犬に元気がなくなる理由としては、
- 体調不良
- 精神的なストレス
- 環境の変化
- 飼い主とのコミュニケーション不足
- 恐怖心
など様々な要因が絡んでくるため、ただの体調不良なのか、それとも甘えているのか判断がつきにくいことがあります。
そのため、常日頃の愛犬に対する健康チェックは欠かせません。
元気がなく、さらに食欲不振や排泄物の状態がいつもと異なる、水を異様に飲みたがり、いつもより多い量を飲む、生殖器が腫れ、膿んでいるなど他の症状が見られる場合、何らかの病気を患っている可能性があるため、様子を詳細に記録し、すぐにかかりつけの動物病院に行き、獣医師の診察を受けるようにしましょう。
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2.犬に元気がなく、食欲不振である場合
犬の食欲不振には、様々な原因がありますが、短期間でいつも通りの様子であれば餌の好き嫌いなどのわがままである可能性もあるためそれほど気にしなくてもよいでしょう。
ただし、元気がなく、長期にわたっての食欲不振の場合は何らかのストレスや病気の可能性もあるため、注意深く観察し、場合によっては動物病院に受診する必要があります。
病気ではない場合、愛犬にとって何らかのショックを受けたときや過度な運動による疲労、ストレスなどが原因で一時的に食欲不振に陥ることがあります。
例えば、自分以外の動物が新しく家にやってきたり、飼い主に子供ができて以前よりも愛情を注いでもらえなくなったなどのほか、ほかの犬との喧嘩にまけてショックを受けたり、遊び過ぎて疲れすぎたなどといったことも犬の食欲不振につながります。
そのため、もし他の対象にやきもちを焼いている場合は
いつも以上に気を使ってあげたり、
遊び過ぎの場合は遊ぶ時間を1回10分程度にして休憩時間を挟み、数回に小分けする、などの工夫をして疲れすぎないようにしたり、
自信を無くしてしまっていたら、簡単なトレーニングなどをして自信を取り戻させるなど愛犬に対するケアをしっかり行うようにしましょう。
また、新しく家にやってきた犬の場合、環境が突然変化したわけですから元気も食欲もよくないことも少なくありません。
その場合は、ハウスにする予定のケージなどに、毛布などその犬が安心する臭いがものを入れて、落ち着くまで観察しつつ暖かく見守ってあげましょう。
何らかの病気を患っている場合は、元気がなくなり食欲不振であるだけでなく、何らかの症状を併発していることもあります。
例えば食べたそうにしているのに餌を食べようとしない場合は、口内炎や虫歯、歯周病などの口腔トラブルがある可能性があります。
また、少しずつ食べる量が減っていく場合は胃腸炎や犬パルボウイルス感染症、条虫症、フィラリア症などの胃腸の病気や感染症の疑いがあります。
さらに食欲不振が長期にわたって続き、下痢や嘔吐、尿の様子が明らかにおかしい、震えといった症状が見られる場合は、胃腸炎や子宮蓄膿症、膀胱炎、腎不全などいった病気の可能性もあります。
これらの病気は重症化すると命にかかわるため、常に愛犬の健康チェックを怠らず、何らかの異常が見られたら至急、動物病院へ行き、受診しましょう。
得に何らかの持病がないシニア犬で元気がなく食欲不振の場合は、加齢とともに食が細くなっていくため、フードをふやかして消化しやすいようにしたものを与えたり、シニア犬用のドッグフードを与えるようにしましょう、
2.1.犬に元気がなく、嘔吐や下痢を伴う場合
嘔吐も下痢も、数回に一度だけであったり、量も少なく犬自体もケロッとしている場合は様子見でも大丈夫ですが、もし犬に元気がなく、嘔吐と下痢両方の症状が見られ、特に嘔吐や下痢を繰り返したり、
一度に大量に吐いたり、吐しゃ物や便に血が混じっていたりドロッとした血便などといった明らかな異常が見られる場合や、うつむいて嘔吐するしぐさをしても一向に吐しゃ物が出ない、
吐しゃ物から便のにおいがするなどといった明らかな異常が見られる場合は、何らかの疾患を患っている可能性があります。愛犬の状態や排泄物と吐しゃ物の状態を詳細に記録し、獣医師の診察をうけ、適切な処置を施してもらいましょう。
嘔吐や下痢を併発する代表的な犬の病気
- 胃炎・胃腸炎
- パルボウィルス腸炎
- 犬ジステンパー感染症
- 大腸炎
- 伝染性肝炎
- 寄生虫症(回虫、条虫、トキソプラズマなど)
- 誤飲(石やゴミなど)
- 食中毒(たまねぎ、チョコレートなど)
- 内臓系疾患(肝臓、膵臓、胆のう、腎臓など)
また、子犬は成犬以上に下痢や嘔吐をしやすく、素人判断ではどのような疾患を持っているのか、それとも一過性のものであるかは判断が付きにくいです。
もし下痢や嘔吐を併発するようであれば、動物病院へ行き、獣医師に診察してもらい、判断を受けましょう。
また、成犬と子犬問わず、下痢や嘔吐を併発する病気は伝染性のものも少なくないため、待合室で診察を待つ間、犬が下痢をしたり吐いたりする可能性があります。
予め電話で動物病院で便と吐しゃ物の状態を知らせ、状況を説明して指示に従って受診するようにしましょう。
2.2.犬に元気がなく、食欲はあるが震えの症状がある場合
犬に食欲はあり、元気がなく震えの症状がある場合も注意しなければなりません。
特に、下痢や嘔吐の症状が見られたり、鼻水や発熱などの症状も見られる場合は、胃腸や感染症などの病気の可能性があるため、早急に動物病院で受診する必要があります。
下痢や嘔吐の症状が併発する場合は先ほどの項目で述べたように、胃腸や肝臓、腎臓、膵臓、胆のうなどの内臓疾患や犬パルボウィルスなどのウィルス性感染症、条虫などの寄生虫症やタマネギ中毒などの食中毒、石などの異物を飲み込んだ誤飲などが原因で、鼻水や発熱といった症状が震えとともに併発する場合は、熱中症や中毒、感染症の疑いがあります。
発熱や鼻水、咳、くしゃみは人間でいうところの『風邪』に似た症状なので、あまり気にしない人も少なくないかと思われますが、実は犬ジステンパーウィルス感染症やケンネル・コフ(犬パラインフルエンザウィルス症)、レプトスピラ症など重症化すると命に関わる病気に罹っている可能性があります。
「ただの犬風邪だろう」と油断してはいけないのです。そのため、食欲があっても元気がない状態が1週間ほど続き、震えやその発熱などの症状が見られる場合は必ず動物病院へ行き、獣医師の診察を受け、適切な処置ををどこしてもらうようにしましょう。
元気がなく、震えが見られる代表的な犬の病気
下痢や嘔吐を併発
- 胃炎・胃腸炎
- パルボウィルス腸炎
- 犬ジステンパー感染症
- 大腸炎
- 伝染性肝炎
- 寄生虫症(回虫、条虫、トキソプラズマなど)
- 誤飲(石やゴミなど)
- 食中毒(たまねぎ、チョコレートなど)
- 内臓系疾患(肝臓、膵臓、胆のう、腎臓など)
発熱、鼻水、咳、くしゃみなどを併発
- 熱中症
- 食中毒(タマネギ、チョコレートなど)
- 鉛中毒
- 薬物中毒
- 感染症(犬ジステンパー、ケンネル・コフ、犬伝染性肝炎、レプトスピラ症、破傷風など)
特に、レプトスピラ症は人獣共通感染症で、飼い主にも伝染する可能性があるため注意が必要ですが、犬ジステンパー、ケンネル・コフ、犬伝染性肝炎と同じようにワクチンで予防できます。そのため、定期的なワクチン接種は必ず行うようにしましょう。
2.3.犬が震える主な原因とは?
犬も人間と同じように、気温が低下して寒さを感じれば体を震わせますが、その他にもストレスや恐怖心、体の痛み、自分以外の生き物への警戒心、加齢による筋力の衰えやてんかん、低血糖症などによる神経症状など様々な要因があり、愛犬が震えているだけでは病気が原因であるのかは判断が非常につきにくいのです。
たまに震える程度の一過性の震えであれば特に問題はないのですが、震えが続いたり、毎回同じタイミングで犬が震えだしたりする場合や、震えと一緒に食欲不振や元気がない状態が続き、発熱などの症状も見られる場合は、なんらかの病気にかかっている可能性があるため、早急に動物病院へ行き、獣医師の診察を受けましょう。
震えの症状が出る代表的な犬の病気
てんかん
急に倒れ、全身の筋肉が震え、口から泡を吹く
低血糖症
ぐったりし、けいれん発作や下半身のまひなどの症状
脳腫瘍
てんかん様発作や運動失調、性格の変貌など多岐にわたる症状
犬ジステンパーウィルス感染症
40度前後の発熱や鼻水、くしゃみ、咳、震えやけいれん、嘔吐、下痢など
尿毒症
食欲不振、下痢や嘔吐、震え、けいれんなど
中毒(食物や毒、薬品など)
激しい嘔吐、下痢、けいれんなど
愛犬に震えがあるからといって、重篤な病気であるとは限りませんが、例えば一定の方向に首を傾けていたり、歩き方がいつもと違っていたり、いつも通りに食事ができていないなどの変化や嘔吐、下痢を併発し、熱を出してぐったりとしているようであればなんらかの病気の可能性があります。
震えだけではなく、その他の症状を併発していないかどうかをしっかり見るようにするのが重要です。
常に愛犬の状態を観察し、室温が低く設定されていないかなどその場の状況など総合的に判断したうえで、震え以外の症状がないかチェックするようにしましょう。特に、持病のある犬やシニア犬などは毎日の健康チェックを欠かさないようにしましょう。
2.4.嘔吐する原因と、『吐き出し』との違い
愛犬がよく散歩中に草を食べたりしてオエッと吐いたり、食べ過ぎや早食いなどで餌を吐き出してしまうことはありませんか?
これらは『吐き出し』と呼ばれる犬の生理的行動で、嘔吐とは異なります。
見分け方としては、嘔吐が消化されているものを吐くのに対し、吐き出しは未消化のものが吐き出されるという明確な違いがあります。このほかにも、嘔吐と吐き出しには異なる点がいくつかあります。
『嘔吐』の場合、食べ物が胃や腸を通っているため既に消化された状態で吐き出され、犬もそれを口にはしません。また、吐くときの姿勢は下を向き、うつむいた状態で吐きます。
嘔吐が見られる場合、胃や腸などに原因があることが多いため、何度も続けて吐いたり、吐しゃ物に地や黒い塊といった異物が混ざっていたり、一度に大量の吐しゃ物を吐く場合は、至急動物病院に連絡し、受診するようにしましょう。
『吐き出し』は吐出(としゅつ)とも呼ばれ、食べたものが胃や腸を通っておらず、食道あたりにある状態で吐きだされるため、未消化であることがほとんどです。
そのため、特に早食いなどですぐに吐き出した場合は犬がそのまま食べてしまうことがあります。
また、吐き出すときも嘔吐の姿勢とは異なり、力強く、前方に向かって飛ばすように吐きだします。吐き出しは、食道を逆流して起こるため食道に何らかの原因があることも少なくありません。
そのため、もし首に触られるのを嫌がったり、食事のスピードがいつもより遅く、頻繁によだれを垂らすといった症状も併発しているようであれば食道炎である可能性もあるため、重症化して嚥下困難や呼吸困難、食道狭窄など症状が出て悪化する前に、早めに動物病院へ行きましょう。
嘔吐の原因と動物病院に受診すべきサイン
犬が嘔吐する原因は、消化器系の病気や感染症、全身または臓器の病気や異物、毒物などを口にしたときに起こる中毒症状のほか、食べ過ぎや水の飲みすぎ、乗り物酔い、急な食事変更など多岐にわたります。
そのため、嘔吐する前の犬の状態や様子、下痢などのほかの症状を併発していないか総合的に見て判断しなければなりません。
もし、いつまでも吐き続けたり、吐しゃ物の量が異常に多かったり、震えや発熱、下痢といった症状が嘔吐とともに見られたり、吐しゃ物に明らかな異常が見られたりした場合は速やかに動物病院に連絡して受診するようにしましょう。
嘔吐とともに現れた場合、すぐに動物病院に受診すべきサイン
- 元気がなく、ぐったりとした状態
- 苦しそうにあえいだり辛そうにしている
- 発熱(犬の平熱は38.5度前後)
- 下痢
- けいれん
- よだれを垂らす
- 呼吸困難
- 2日以上嘔吐が続く
- 吐しゃ物の中に血が混じっている
- 吐しゃ物から便のような臭いがする
嘔吐後の愛犬へのケア
愛犬が嘔吐した際のケアは、状況によって異なりますが、半日から1日ほど水を与えず様子を見て、嘔吐が止んだら少しずつ水を与えます。
その後、再び愛犬が嘔吐する様子が見られず、落ち着いてきたら徐々に水の量を増やして与えるようにしましょう。
水を吐かず、愛犬の状態も落ち着いてきたら、今度は水を与えたときと同じ要領で餌を与えます。少量の餌を愛犬に与えて吐かなければ、数時間ほど間隔をあけ、餌の量を少しずつ増やしていきます。
目安としては、1日に3~4回小分けにして餌を与えるのを2,3日ほど行い、様子を見るようにしましょう。
もし、愛犬が嘔吐のほかに下痢をした場合は、脱水症状に陥る可能性があるため十分注意しましょう。下痢の場合、水分をしっかりとらせたりなど嘔吐の時と愛犬へのケアがかなり異なります。
また、点滴などの処置が必要な場合もあるため、嘔吐と下痢が同時に症状として現れた場合は必ず動物病院に連絡し、受診して適切な処置を獣医師から施してもらうようにしましょう。
3.震えと元気のなさが伴う代表的な6つの病気
元気がなく、震えなどの症状を伴う犬の病気の中でも、特に注意すべきなのは、
- 狂犬病
- 破傷風
- 低血糖症
- 脳腫瘍
- 犬ジステンパーウィルス感染症
- 椎間板ヘルニア
などの病気です。いずれも重症化すれば命にかかわる危険性のある病気であるため、早期発見が必要となってきます。
ですが、前項でご説明しましたように、愛犬がただ震えているだけではこれらの病気にかかっているかどうかの判断は難しく、他になんらかの症状を併発していないかどうか観察し、動物病院で獣医師の診察を受けなければなりません。
この項では、特に注意すべき犬の代表的な病気の原因や症状、治療法などを詳しく解説していきます。
3.1.狂犬病
致死率100%といわれる狂犬病は、人獣共通感染症であり、主な感染経路は狂犬病に罹った犬がほかの犬などに噛みつき、傷口から唾液と一緒にウィルスが侵入することで感染します。
日本では、昭和32年に猫が狂犬病を発症したのを最後に発生していませんが、以前アジアやアフリカなどの諸国では狂犬病による死亡例が未だ相次いでいるため、油断はできません。
主な症状としては、段階ごとに『前駆期』と『狂躁期』、『麻痺期』に分かれ、まれに前駆期から狂躁期を飛ばして麻痺期に移行することもあります。狂犬病は『狂躁型』が80~85%と非常に多く、一番攻撃性を増す狂躁期に他の個体や人間にも噛みつくことで伝染していきます。
犬の狂犬病の主な症状
前駆期(2~3日)
発熱、食欲不振、暗いところに隠れたがる、恐怖心と興奮による飼い主への威嚇行動や遠吠え、瞳孔が開きっぱなしになる(瞳孔散大)、性格の変貌など
狂躁期(2~4日)
過剰に興奮し、吠えるなど攻撃的な行動をとるようになる、異物(石、小枝、フンなど)を無暗に摂取する、生物・無生物関係なく目につくものに対して攻撃的になり、噛みつこうとする、表情が凶暴な顔つきになる、光や音に過剰な反応をとる、咽頭筋の麻痺による吠え方の変化など
麻痺期(1~2日)
けいれんを起こし、全身の麻痺による歩行困難などの運動失調や、咀嚼筋の麻痺によって下あごが垂れ下がったり、嚥下困難に陥る、舌を出して涎をだらだらと垂らし続ける、むせるような鳴き声、意識を失って昏睡状態に陥り、命を落とす
犬の狂犬病の潜伏期間は2週間から2カ月ほどとされていますが、中には狂犬病ウィルスに感染してから3日で発症したケースや、150日ほどかかって発症したケースもあり、潜伏期間中は症状が出ないため診断・治療する手立てがありません。
また、狂犬病は現在でも有効な治療法が確立されてなく、人畜共通感染症で人間にも感染リスクがあり、致死率も変わらない危険なウィルスであるため、公衆衛生上と他の動物や人間の安全を考え、発症した動物は安楽死が選択されます。
そのため、ほかの犬に噛まれたなど疑わしい行動があったときには直ちに動物病院へ行き、狂犬病ワクチンを再接種し、狂犬病を発症しないかどうか見極める経過観察を厳重な管理のもと行わなければなりません。
それだけ、狂犬病は危険な病気なのです。
愛犬を狂犬病にさせないための一番の予防法は、やはり狂犬病ワクチンの定期的な接種です。
日本は狂犬病洗浄国ですが、昨今のペットブームによりいまだ狂犬病が治まっていない国から多くの動物の輸出があり、検疫を通しているとはいえ100%安全とは言い切れません。
そのため、愛犬を狂犬病の危機にさらさないためにも、年に1回の狂犬病ワクチンを必ず接種するようにしましょう。
3.2.破傷風
傷口に土などが付いたり、古クギなどを踏んでけがをしたときに発症しやすいとされている破傷風は、犬も感染する人畜共通感染症です。
犬の場合も人間と同じく、傷口に破傷風菌が潜んでいる土や古クギなどが接触することで、破傷風菌が「テタノスパスミン」という強力な毒素を生成することで様々な症状を引き起こし、発症後5日ほどで命を落とすという非常に危険な病気です。
一般に、破傷風菌は世界中の土壌中で生息し、偏嫌気性菌であるため通常は芽胞という殻で覆われているため、空気中で毒素を出すことはなく無害ですが、傷口などから体内に破傷風菌が侵入すると、感染部位で芽胞を破って増殖し、要買い得と神経毒などの毒素を生成します。
このうち、神経毒が運動神経と中枢神経に多大なダメージを与えて四肢強直(体の筋肉がこわばること)やけいれんなどといった症状を引き起こします。
犬の破傷風の主な症状
- 頭の片側にだけけいれんが起こり、まぶたが引きつり、咬筋、顔の筋肉がけいれんして顔が引きつる
- 口が開きにくくなる、よだれを垂らす
- 眼球が陥没し、瞬膜(目頭あたりの白く薄い膜状のまぶた)が突出する
- 首の強直
- 耳が立ち上がったままになる
- 背中を弓なりに反らせる
- 四肢のけいれんや強直による『木馬様姿勢』
- 音や光、振動といった刺激への過剰な反応
- 熱
- 嚥下困難
- 呼吸困難など
破傷風の恐ろしいところは、強直などで激しい痛みを伴いながらも意識がはっきりとし続けているため、苦痛をずっと味わい続けるというところです。
愛犬に地獄のような苦しみを味わわせないためにも、愛犬が破傷風にかからないように飼い主が徹底的に予防対策を行う必要があります。
現在、犬用の破傷風ワクチンはないため、破傷風に罹るリスクを減らすには飼い主による愛犬の傷口洗浄と消毒による予防が重要となります。
散歩中、愛犬がケガを負い、土などが傷口に付着してしまったらすみやかに水などで徹底的に土を洗い落とし、消毒して傷口を清潔にしましょう。
また、土だけでなく古クギや古い有刺鉄線などにも破傷風菌が潜んでいる可能性があり、とくに古クギが深く刺さった場合は傷口の洗浄が難しく、破傷風菌も増殖しやすく感染リスクが高まってしまいます。
そのため、散歩中は愛犬が古クギを踏んだり、有刺鉄線に体をひっかけてケガをしないよう飼い主が注意を配り、散歩後も肉球などにケガをしていないか充分にチェックしましょう。
もし犬が破傷風を発症した場合は、抗生剤(ペニシリンなど)や破傷風毒素血清の投与による治療を行います。
傷口を洗浄した後、患部周辺の細胞及び異物を取り除き、抗毒素血清を投与してから抗生剤を与え、犬の体内にいる破傷風菌を完全に死滅させます。
その後、対処療法として鎮痛剤や栄養剤を投与して酸素吸入などを行います。四肢の強直は適切な治療を行えば1週間ほどで収まりますが、神経に結合した毒素の量によっては、3~4週間ほど治るのに時間がかかる可能性もあります。
そのため、早期発見および早期治療が重要となってきます。命に関わる危険な病気ですので、常に愛犬のチェックを行い、疑わしい症状が見られたらすぐに動物病院に受診しましょう。
基本的に、破傷風は犬から人へ感染することはありませんが、万が一の場合を備えて、飼い主も破傷風ワクチンを接種しておいた方が良いでしょう。
日本では、ほとんどの人が12歳のときに3種混合ワクチン接種を受けているため20代前半までは免疫がありますが、それ以降はなるべく追加ワクチンを接種しておいた方が良いとされています。
万が一愛犬に噛まれるなどされた場合は消毒し、人間の病院で医師と相談してから破傷風ワクチンを接種しましょう。
3.3.低血糖症
血糖値が下がることで様々な症状を引き起こす低血糖症は犬にも起こります。
犬の低血糖症の主な症状
- 元気がなくなり、ぐったりとする
- 運動失調になる
- 下半身の麻痺
- 激しくない筋けいれん(てんかんの発作とは異なる)
- 意識を失う
- 失明(数日~恒常)
犬の低血糖症は子犬と成犬、シニア犬もしくは糖尿病を患っているかどうかで原因が異なるため注意が必要です。子犬の場合は、主に空腹や気温の低下による体の冷え、内臓障害のために栄養吸収がうまくいかないといったことが原因となります。
子犬のころは成犬よりも内臓機能が低く、特に生後3カ月ほどの子犬は肝機能が低くエネルギー源となる等の貯蓄が不十分であるため、6時間程度あけても空腹状態になり、低血糖になることもあります。
そのため、冷やしすぎたり、食事の間隔を空けすぎないように十分注意しましょう。
成犬の場合、糖尿病を患っていなければ空腹や過度の運動が主な原因となります。特にゴールデンレトリバーやボクサー犬、アイリッシュセッターやスタンダードプードル、ジャーマンシェパードなどの大型犬は低血糖になりやすいため食事量や運動量には十分気を付けましょう。
糖尿病を患っている犬の場合は、主にインスリンの過剰注射が原因となります。
インスリンは血液中の糖分を細胞内に誘導する働きがあり、血糖値を下げる働きがありますが、これを適切な量ではなく過剰に注射してしまうと、血糖値が下がりすぎてしまい、低血糖症を引き起こしてしまうのです。
シニア犬の場合は、加齢に伴う肝機能の低下やインスリンを作り、分泌する機能を持つ膵臓に腫瘍ができることにより、インスリンが過剰に分泌され、結果低血糖症を引き起こすことがあります。
シニア犬に限らず、肝臓や膵臓などに持病を持つ犬も同じように低血糖症に陥りやすいため、常に愛犬の健康チェックを怠らないようにしましょう。
もし愛犬が低血糖症になったときは、糖尿病や肝臓、膵臓腫瘍といった持病がない場合に限り、子犬はブドウ糖溶液を摂取させ、成犬には紹介者酸い餌を与えて糖分を補給させます
。もし疾患がある場合はそちらの治療を優先します。
けいれん発作を起こしたり、意識がない場合は、多量にブドウ糖を摂取させるのは喉に詰まらせて窒息する可能性があるため、ガムシロップなどを歯茎にすりこむように塗りつけて早急に動物病院へ搬送しましょう。
愛犬を低血糖症にしないための対策としては、常に十分な食事量を与え、肝機能を低下させないよう十分注意することです。
特に子犬の場合は、成犬と比べると内臓が未発達であるため低血糖症に陥りやすいため、食事の与え方や体が冷えすぎないよう環境を整えるなど気を配りましょう。
3.4.脳腫瘍
犬の脳腫瘍の原因は様々であり、特に多いのが『原発性脳腫瘍』と『続発性脳腫瘍』の二つです。
それぞれ、原発性脳腫瘍は犬の脳細胞が腫瘍化したもので、続発性脳腫瘍は、他の部位にできたガンが脳にも転移あるいは頭蓋骨や耳、鼻といった脳に近い部位に腫瘍ができた際に染みこむように脳にまで広がってできた脳腫瘍を指します。
犬の脳腫瘍の主な症状
- 歩行時のふらつき
- けいれん
- 神経麻痺
- 眼球が左右に揺れ動く
- 斜頸(首が曲がり、一方方向に運動が制限されている状態)
- 旋回行動
- 異常行動に走る
- 性格の変化
- いつも寝てばかりいる
- 認知障害
- 顔面マヒ
- てんかん様発作など
犬の脳腫瘍の症状は多岐にわたり、一つだけ起こることもあれば複数の症状が起こることもあります。脳腫瘍は発見が早ければ早いほど、治療も早ければ早いほど命を落とすリスクも減り、後遺症も少なくなります。そのため、常に愛犬の健康チェックを怠らず、少しでも疑わしいところがあれば早急に動物病院で受診しましょう。
犬の脳腫瘍の治療方法は、腫瘍ができた脳の部位によって異なるため、まずは動物病院で獣医師の診察を受け、薬剤を用いた化学療法か外科手術、放射線治療を行うか、若しくは並行して行うかを決めます。
また、対処療法として、脳腫瘍による炎症や浮腫を抑えたり、てんかん様発作をコントロールするための薬を投与する内科的治療も行うことがあります。
犬の脳腫瘍の予防は現状ではほぼ不可能です。そのため、常に愛犬の様子をチェックし、早期発見に努めるようにしましょう。
犬の脳腫瘍チェック表
- 性格が極端に変わった
- 目が揺れ動いたりする
- 首が一定の方向に曲がったり傾いたままになっている
- 後ろ脚がふらついたり歩き方がおかしい
- 一定方向に傾いて歩いている
- 片方、あるいは左右両方の顔の筋肉が垂れ下がっているように見える
- 咬筋が薄くなり、犬の頭のてっぺんの骨が出っ張っているようになっている
3.5.犬ジステンパーウィルス感染症
犬ジステンパーウィルス感染症は、主に感染している犬の目やにや鼻水、唾液、排泄物に触って伝染する『接触感染』と感染している犬のくしゃみや咳によって空気中にウィルスが飛散し、それをほかの犬が吸い込んで伝染する『飛沫感染』の二つが主な感染原因となります。
特に、生後1歳未満の子犬でワクチン未接種の個体や、成犬でも犬ジステンパーワクチンを定期的に接種していない場合、また加齢や持病が原因で免疫力が低下している場合も犬遺ステンパーウィルス感染症の発症リスクが高くなります。
犬ジステンパーウィルス感染症の主な症状
感染から4~6日
発熱、食欲不振といった風邪のような症状
感染から1週間~
元気がなくなる、結膜炎、角膜炎、目やに、嘔吐と下痢、腹痛、血便、咳、くしゃみ、呼吸が荒くなる、鼻先が乾燥するなど
重症化した場合
チック症状(咬筋あたりがピクピク動く)、マヒ、けいれん、運動失調、網膜剥離や視神経の炎症による失明、化膿性皮膚炎、鼻や肉球が硬質化するハードパットなど
犬ジステンパーウィルス感染症は、発症後免疫力が十分に備わっていない犬の場合、およそ3カ月以内に50%の確立で命を落とすこともある危険な病気です。
特に、重症化した場合は治ったとしても失明や神経症状などの後遺症が残ることもあるため、徹底した予防と早期発見が重要となります。
対策と予防としては、犬ジステンパーワクチンの定期的な接種が重要です。
特に、飼い始めたばかりの子犬は定期的なワクチンの摂取が必要となります。犬ジステンパーは混合ワクチンを摂取することで予防でき、犬の場合は6~8種混合ワクチンを接種することが勧められています。
子犬の時は、生後40~60日に一回目、生後3カ月ごろに2回目、生後4か月後に3回目を摂取し、以降は追加として年に一度の定期的な混合ワクチン接種を行うようにします。
成犬で、今までワクチンを売ったことがない場合は、始めて接種した時点を1回目とし、その約4週間後に2回目のワクチンを接種します。以降は年に一度の追加ワクチンを定期的に接種するようにしましょう。
犬ジステンパーの治療方法は、現時点では有効な治療薬がないため、点滴や抗生剤、抗けいれん剤の投与などの支持療法や対処療法がメインとなります。
また、多頭飼いをしているご家庭の場合は、他の犬や猫などに伝染しないよう感染した犬は隔離・入院することになります。
3.6.椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、頭部や胴体の重みを支える脊椎のクッション的役割をする部位である椎間板が、激しい運動や加齢による骨の老化によって摩耗、損傷することで起こる病気で、特にミニチュアダックスフントなどのダックス系やペキニーズ、ビーグル、パグ、プードルー、シーズといった犬種に多くみられ、2~7歳の若年期から発症する傾向にあります。また、肥満も椎間板ヘルニアの原因となるため、体重管理は充分に行わなければなりません。
犬の椎間板ヘルニアは、損傷した部位によって『頸部椎間板ヘルニア』と『胸・腰部椎間板ヘルニア』の二つに分かれます。
犬の椎間板ヘルニアの主な症状
頸部椎間板ヘルニア
頸部(首)が鋭く、またはジンジンと痛む(疼痛)、神経マヒによる歩行困難、重症化で自力で立ち上がれなくなり、四肢の完全マヒによる半身不随や排せつ困難など
胸・腰部の椎間板ヘルニア
腰から背中にかけての疼痛、重症化による後ろ脚のマヒや歩行困難、排せつ困難など
犬の椎間板ヘルニアの症状は、痛みから始まり、症状が進むにつれ、軽度の運動障害や反射消失、中等度運動障害と徐々に動けなくなっていき、痛みを感じながらも四肢が完全に動かなくなり、最終的には痛みすらも感じず、四肢も完全に動かなくなります。
椎間板ヘルニアの治療は早期発見が重要ですので、もし歩き方がおかしかったり、運動を嫌がったり背中などを撫でたりするといたがるといった症状が見られたら、速やかに動物病院へ行き、診察及び適切な治療をしてもらいましょう。
予防方法としては、激しい運動を控え、特に椎間板ヘルニアになりやすい犬種を室内飼いしている場合は、フローリングですべらないようカーペットを敷き、階段などの激しい段差を上り下りさせないようにして脊椎に負担をかけないようにしましょう。
犬の椎間板ヘルニアの主な治療法として、症状が軽度である場合は薬などで痛みを抑えながら安静にさせる内科的治療をメインとし、重度の場合は外科的治療を行い、その後は犬の症状と状態によって獣医師に相談、協力をしてもらってリハビリテーションを行い神経の機能回復に努めます。焦らずじっくりと、獣医師の協力の元でリハビリテーションを行うようにしましょう。
3.7.犬に元気がない場合、服薬は必要か?
基本的に、犬の病状、状態によって適切な治療を施さなければならないため、ただ『元気がない』状態を回復するための薬というのは厳密にはありません。
そのため、飼い主の独断によって薬を与えたり、また処方された薬を飲ませないようにするのは避けるべきです。
もし愛犬の元気がない状態が長く続くようであれば、まずは獣医師に相談するようにしましょう。その上で、獣医師の診察と判断に従って、処方された薬を獣医師の指示通りに愛犬に与えるようにしましょう。
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4.まとめ
今回は、愛犬に元気が見られないときの原因や、注意したい症状や病気についてご説明していきましたが、いかがでしたでしょうか。
一時的に元気がない場合でも、飼い主による愛犬へのフォローやケアは重要です。常に愛犬の状態をチェックし、なんらかの症状が併発しているようであればすぐに動物病院へ行き、獣医師の診断を受け、適切な処置を施してもらう必要があります。
愛犬の健康管理のために必要な知識を学ぶことも飼い主の責任であることをしっかりと理解しましょう。
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