そもそも犬のしつけの中で「ヒール」という言葉すら耳にした事の無い飼い主さんもいるかと思います。
特に、近代人気の小型犬や超小型犬を飼っている飼い主さんの中には、ご存じない方が多いかもしれません。
では「ツケ」とか「ツイテ」という言葉ではどうですか?何となくお散歩のイメージが湧くかと思います。
「マテ」とか「オスワリ」はたいてい教えていますが、お散歩を日課とする犬なら「ツケ」とか「ツイテ」同様に「ヒール」は是非押さえておきましょう。
目次
1.どうして「ヒール」が必要なのか?
1.1. 「ヒール」とは?
1.2. どんな場面で使うの?
2.トレーニングをする前に準備しておきましょう!
2.1. ご褒美はお忘れなく!
2.2. 集中するためには、環境も大切です
2.3. 指示語や褒め言葉は統一しよう
2.4. その他注意すべきこと
3.いよいよ、トレーニング開始!
3.1. STEP1~ご褒美を使って、飼い主の横につけましょう
3.2. STEP2~指示語“ヒール”を認識させよう
3.3. STEP3~認識できたら、指示語だけで横につかせてみましょう>
3.4. STEP4~ご褒美を減らして“ヒール”を完成させよう
3.5. STEP5~外や散歩中にも、“ヒール”をさせよう
1.どうして「ヒール」が必要なのか?
「ツケ」も「ツイテ」も「ヒール」もお散歩など愛犬が人間と一緒に歩く時に重要な言葉です。
これらの言葉をしつける事が何故重要なのか?
勿論、しつけの一環として犬と飼い主の主従関係を明確にしたり、外でも好き勝手な行動を取る事が無く、人間社会のルールに則り、また他の犬や人間と出会ったり、お散歩やアウトドアライフを楽しく一緒に過ごす為に重要ですが、「ツケ」(又はツイテ)や「ヒール」には他に必要な理由もあるのです。
お家の中でのしつけで家族との関係が身についても、外の環境は犬にとってはまた少し違った環境です。
他の犬のマーキングの臭いであったり、行きかう他の犬や動物、家族以外の人間、様々な音など、犬にとっては家の中とは異なる新鮮で驚きの情報の渦です。
ですから、外に出るといろいろ興味をそそられる事がいっぱいで、ついつい勢い良く興味の方向に進みたくなります。
ですから家の中以上に飼い主との関係は守るべき位置関係を教えなければならないのです。
1.1. 「ヒール」とは?
リードを付けて一緒に歩いていると思っても、犬が先を歩き、行きたい方向に自由に行かせていると犬はその飼い主より自分が上(リーダー)だと認識します。
楽しいお散歩の時こそ愛犬に勘違いをさせず、飼い主がしっかりリーダーである事を教えるのです。
この飼い主がリーダーであるという歩き方を「リーダーウォーク」と言っています。
諸説がありますが、この「リーダーウォーク」の中で人の右側について歩かせる事を「ツケ(又はツイテ)」という言葉で教え、人の左側について歩かせる事を「ヒール」と言います。
1.2. どんな場面で使うの?
「リーダーウォーク」が必要な事は理解出来たけど、「ツケ(又はツイテ)」で右側を歩かせるだけでは何故ダメなの?
「ヒール」で左側を歩かせなければならない場面は?と疑問を抱かれる事でしょう。
確かに「ヒール」は競技会や優良家庭犬の試験などでは必須ですが、普段の生活の中で人の右側を歩くも左側を歩くも、何の違いがあるか意識しませんね。
しかし、実はここにも理由があるのです。犬はオオカミ時代からの本能で群れの右側が優位者の位置づけのようです。
また、犬は総体的に右利きで、夢中になって歩いていたりすると右寄りになって行くそうです。
つまり、左側にいる人間との距離がだんだん空いてしまいがちになるわけです。
また、特に日本では左側通行なので、当然、左側に歩かせる事で愛犬を守る事も出来るのです。
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2.トレーニングをする前に準備しておきましょう!
この「リーダーウォーク」をしつける前に、ご褒美をもらう為に飼い主の指示通り「マテ」や「オスワリ」が出来るようになっていた方がトレーニングしやすいです。
何故なら、正しく歩く前に指示通りに左側に付かせるトレーニングをするからです。
また、トレーニング前の準備と言えば、犬の方だけではなく人間の方もリードを左手で操作出来るように準備しておくと良いでしょう。
「ヒール」のトレーニング中は、左手でリードを操作し、右手にはご褒美のおやつを持ちます。
リードは長い物や伸縮タイプなどいろいろありますが、トレーニングには長さは短く伸縮しないタイプが良いです。
2.1. ご褒美はお忘れなく!
犬にとっては少しハードルが高いトレーニングですからご褒美は重要です。
但し「ご褒美」は必ずしもおやつでなくても大丈夫です。
おもちゃでも結構ですし、愛情込めて撫でてあげる事や、飼い主さんの暖かい誉め言葉でさえ、愛犬にとっては十分なご褒美となります。
2.2. 集中するためには、環境も大切です
トレーニング開始期は気持ちを集中させる為に、他に気を取られない室内や邪魔な要素の少ない公園などの環境が良いでしょう。
上手に左側に付けるようになったら、敢えて刺激的な環境の中でも出来るよう、場所を変えてトレーニングをして行きましょう。
場所を移動する事は犬にとっては好奇心がそそられ、それだけでも楽しい事なのです。
2.3. 指示語や褒め言葉は統一しよう
トレーニングの為の準備ですが、最も肝心な準備は家族で言葉を決めておく事です。
「ツケ」でも「ツイテ」でも「ヒール」でも「レフト」でも何でも結構ですが、家族の中で同じ動作を指示するのに異なる言葉を使っては犬は困惑するだけで、なかなか覚える事が出来ないのです。
これは他のしつけについても同様です。褒める言葉なども極力様々な言葉は使わず家族で統一の言葉を決めておきましょう。
統一する事で犬は飼い主が褒めてくれている事を理解できるようになります。
2.4. その他注意すべきこと
「ヒール」の最終形は、飼い主との距離であったり、歩幅に合わせるなど犬にとっては自分も動きながらの事なので比較的難しいトレーニングです。
更に、外で行う場合は、いろいろな音や臭いの興味がそそられる情報が行きかう環境なので、一生懸命飼い主の指示に従おうと集中するとなかなか長時間は疲れてしまいます。
疲れて無理やりトレーニングを続けては効率が落ちるのみならず、犬はそのトレーニングを嫌いになってしまいます。
トレーニングは根気よく、焦らず、毎日少しづつ積み上げて行きましょう。トレーニングはせいぜい5~15分程度を目安にしてください。
上手く出来ないからと言って、勿論叩くなどしては絶対ダメです。
犬に覚えてもらうには、「それは楽しい事、嬉しい事」と覚えさせる事が一番です。
3.いよいよ、トレーニング開始!
このトレーニングのポイントは、特に犬にとって興味がそそられる情報が満載の環境の中で、きちんと飼い主との正しい距離を保ちながら長い時間歩けるという事です。
つまりこのトレーニングには位置・距離・速度・継続という体得しなければならない4つの要素が含まれているのです。
愛犬にとっては集中しにくい環境の中での難しいトレーニングである事を理解してあげて、無理のないトレーニング計画を立てましょう。
そしてここで重要なのは、このトレーニングは愛犬と一定の距離離れているのでアイコンタクトや声掛けが重要である事も忘れないでください。
「リーダーウォーク」は、出来るようになってからもアイコンタクトや声掛けは大切なポイントなのです。
愛犬が覚えた飼い主との距離感を保ちながら長い時間歩くのは、そこに安心感があるからです。
3.1. STEP1~ご褒美を使って、飼い主の横につけましょう
最初は位置のトレーニングです。
右、左区別なく「ツケ(又はツイテ)」か「ヒール」の一語で教える場合でも、「ツケ(又はツイテ)」で右側、「ヒール」で左側と分けて教える場合でも、まずはその言葉で飼い主の横に来る事を覚えさせます。
愛犬と向き合っておやつを見せます。おやつで誘導して、飼い主の右(又は左)側の位置に付いたらご褒美を上げます。
正面から直ぐに横に付かせる事が出来たら、回転してから横に付かせるなど、いくつかの動作を組みこんでも正しく横に付けるように繰り返します。
3.2. STEP2~指示語“ヒール”を認識させよう
横の位置を覚えたら言葉をセットしてトレーニングしましょう。
右、左の区別が必要なければ家族で統一した一語を使ってください。
STEP1の行動を「ツケ(又はツイテ)」とか「ヒール」と言葉を発しながらおやつで誘導して正しい距離の飼い主さんの横に付けるようにします。
3.3. STEP3~認識できたら、指示語だけで横につかせてみましょう
STEP2まで出来るようになったら、おやつでの誘導は無しで指示語のみでトレーニングします。
きちんとした位置に付けた時点でご褒美をあげます。
3.4. STEP4~ご褒美を減らして“ヒール”を完成させよう
STEP3まで出来るようになったら、正しい位置に付けた時のご褒美のおやつを減らして行きましょう。
正しく出来たのに何もご褒美が無いという事ではありません。
まずはおやつの回数を減らして、代わりに撫でてあげたり、言葉で褒めてあげます。
言葉のご褒美はトレーニングが終わっても飼い主との当然のコミュニケーションなので、毎回でなくても上手に出来た時には最低でも言葉で褒める事はしてあげてください。
STEP4までの段階で出来なかった場合でも、決して焦る事なく、克服すべきSTEPに戻っても結構ですので、STEP4までにはおやつの誘導無しで指示語だけで正しい位置に付けるようにしてください。
3.5. STEP5~外や散歩中にも、“ヒール”をさせよう
出来れば最初は室内や誰もいない公園など、犬が集中出来る環境の中で、STEP4で覚えた飼い主との位置関係を保ちながら、歩く練習をしてください。
歩く距離を少しづつ長くして行きますが、この時、時折の声掛け(愛犬の名前を呼ぶ)して、顔をあげた愛犬とのアイコンタクトを差し込んでください。
そこまで出来るようになったら、最後はいろいろな場所に一緒い歩いていき、どんな環境でも飼い主との位置関係が保てるようにしましょう。
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4.まとめ
犬のどのしつけにも共通する事ですが、本来犬はとても人間寄りですし頭が良い動物です。
人間の方が正しい方法で、マメに根気よく愛情を持って続ければ、犬はすぐに「それは楽しい事、嬉しい事」と覚えてくれるのです。
ただし、人間の言葉ほどたくさんの言葉は覚えられませんので、言葉と指示は明確にシンプルに、そして統一した言葉を使う事は鉄則です。
そして当たり前の行動として身に付くまでのトレーニング期間中は、焦らず、無理をさせず、段階を踏まえて、上手に出来たらちゃんと褒めてあげる事を忘れないでください。
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