犬の抗生物質の副作用や、種類、下痢や吐くときの原因と期間について

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ペニシリンの発見以降、細菌感染症に多大な効果を見せ、治療に役立ち続けている抗生物質は、犬の皮膚炎や消化器の病気などといった、細菌による感染症治療にも用いられています。

私たち人間と同じように、犬にも処方される抗生物質は、一方で耐性菌や副作用といった問題も抱えています。そこで今回は、犬の感染症に用いられる抗生物質について、副作用や耐性菌の話も交えて簡単にご説明していきたいと思います。

目次

1.犬にも抗生物質が必要?
1.1.抗生物質の仕組み
1.2.抗生物質が必要になる病気
1.3.抗生物質が効かない?『耐性菌』とは?

2.抗生物質の副作用について

3.犬の抗生物質の種類と効果

4.処方された抗生物質は、必ず獣医師の指示通りに投与する

5.まとめ

1.犬にも抗生物質が必要?

抗生物質とは、簡単に言えば細菌を倒すお薬です。主に天然由来の抗生物質と合成して作られたものに分けられ、その種類はおよそ100種類以上とされています。

主に細菌の増殖と活動を弱め、倒す効果があるものを抗生物質と呼び、通常は犬の病状や原因となる細菌を調べて、それに合わせて処方されます。

また、感染症でも真菌が原因である場合は抗真菌薬が、寄生虫が原因の場合は駆虫薬が処方されます。これら抗真菌薬と駆虫薬も抗生物質と呼ぶこともありますが、今回は狭義の意味で、細菌に対して効果のある抗生物質について説明していきます。

1.1.抗生物質の仕組み

抗生物質の主な役割は、細菌を弱め、倒すことです。

例えば、膿皮症や毛包炎といった細菌性皮膚炎を犬が患った場合、クラベット250やクリンベットといった抗生物質を投与し、最近の増殖と活動を抑え、その勢力が弱まっている間に犬自身が備えている免疫機能や皮膚の防御機能で皮膚を守り、回復させます。

つまり、抗生物質は根本的な原因となる細菌を駆逐するのが主な役割であり、炎症や痒み、傷、痛みなどを治し抑える機能は持っておらず、あくまで犬本来の免疫機能によって病気を治すための“サポート役”でしかないのです。

1.2.抗生物質が必要になる病気

抗生物質は、細菌の勢力と増殖力を抑えて倒すための薬なので、細菌が原因となる感染症はほぼ抗生物質が必要になります。

例えば、皮膚炎や気管支炎、内臓疾患、関節炎といった感染症の治療はほとんどの場合抗生物質が用いられます。

ただし、抗生物質は細菌のみ効果のあるお薬なので、ウィルスが原因の感染症には効果がなく、真菌が原因の場合は抗真菌薬を、寄生虫の場合は駆虫薬を用いることになります。

そのため、決して素人判断で病気を決めつけるのではなく、必ず動物病院で獣医師の診察を受けて、その処方に従って投与しなければなりません。

1.3.抗生物質が効かない?『耐性菌』とは?

抗生物質を使う上で気を付けなければならないのが『耐性菌』の存在です。

耐性菌とは、抗生物質による治療を続けていくうちに、効果が現れない耐性のある菌が偶発的に発生し、増殖することで生まれる菌のことで、多剤耐性菌やESBL産性菌、MRSAなどが該当します。特にMRSAは院内感染などで話題になった耐性菌なので、耳にしたことがある方も少なくないでしょう。

これら耐性菌は従来の抗生物質が効きにくく、治療が困難となるため、より強力な抗生物質を用いて治療に当たらなければなりませんが、そういった抗生物質は副作用も強く、また、強力な抗生物質でもそれに耐性を持った細菌が発生しないという保証はありません。

故に、こうした耐性菌の増殖を防ぐためにも、不特定多数の病気のペットがいる動物病院の待合室では、耐性菌を保有している可能性があるため、接触は避け、ペットが耐性菌に感染するリスクを防ぎましょう。

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2.抗生物質の副作用について

抗生物質は細菌に対して効果のあるお薬ですが、あくまでも“物質”であるため、生物の体にとって有益なものであるか否か、害をなす細菌であるかの判断はつけられません。

そのため、犬の健康に必要な善玉の腸内細菌も倒してしまい、下痢や嘔吐といった副作用を起こすこともあります。また、場合によってはアナフィラキシー・ショックを起こすことや、長期にわたって投与し続けることで腎不全といった重篤な副作用を起こす可能性も少なくありません。

もし何らかの副作用が見られたら、すぐに抗生物質を処方した動物病院へ行き、薬を代えてもらいましょう。

一番やってはいけないのが、副作用が出たからといって勝手に処方された薬を飲ませるのを中止することです。根本的な原因となる細菌が駆逐されず、感染症が治らずかえって悪化してしまうからです。

ほとんどの動物病院では、犬に抗生物質を投与する前に、過去にアレルギーや下痢、嘔吐といった副作用が出なかったか、犬の健康状態や病歴などについて質問するはずなので、必ず正確に答え、副作用の出にくい抗生物質にしてもらったり、乳酸菌や胃腸を保護するお薬と一緒に処方してもらいましょう。

そして万が一副作用が出たらすぐに動物病院へ行き、副作用の出ない別の抗生物質に代えてもらい、治療を続けましょう。

3.犬の抗生物質の種類と効果

犬に投与される抗生物質は、

  • ベータラクタム系抗生物質
  • 合成抗菌薬
  • アミノ配糖体
  • テトラサイクリン系
  • マクロライド系
  • クロラムフェニコール系

があり、この中で特に用いられる機会が多いベータラクラム系抗生物質には

  • セフェム系注射薬
  • セフェム系経口薬
  • ペニシリン系
  • その他

と、感染症によって投与する薬品が異なっていきます。最近の細胞壁の生成を阻害することで、増殖と活動を防ぎますが、一方で腸内細菌にも効果が出てしまい、下痢などの副作用を起こす可能性もあるため、長期間の服用は避け、なるべく乳酸菌や整腸剤と一緒に犬には飲ませましょう。

ベータラクラム系抗生物質の種類

セフェム系注射薬 セフェム系経口薬 ペニシリン系 その他
  • セファロチン
  • セファリゾン
  • セフスロジン
  • セフメタゾール

など

  • セファレキシン
  • セファクロル
  • セフィキシム

など

  • ベンジルペニシリン
  • アンピシリン
  • アモキシリン

など

  • ラタモキセフ
  • アズトレオナム
  • ホスホマイシン

など

合成抗菌薬には、

  • サルファ剤
  • キノロン系

があり、これらは膀胱炎や尿同園といった尿路感染症の治療に用いられることが多く、他には原虫が原因で引き起こされる下痢の治療にも用いられます。ただし、サルファ剤には耐性菌ができやすく、キノロン系はより強力で広範囲にまたがってどの細菌にも効果のある抗生物質ですが、やはり耐性菌が発生する可能性も否定できません。獣医師の適切な指示に従い、投与するようにしましょう。

合成抗菌薬の種類

サルファ剤 キノロン系
  • スルファジメトキシン
  • スルファモノメトキシン
  • スルファジアジン
  • スルファメトキサゾール

など

  • ナリジクス酸
  • ノルフロキサシン
  • オフロキサシン
  • エンフロキサシン
  • シプロフロキサシン

アミノ配糖体は、緑膿菌といった通常の抗生物質では効果が出にくい生存力の強い細菌にも効果が期待できるのですが、あまりに強力すぎるため、聴覚障害や腎毒症といった重篤な副作用が出ることもあります。

例えば、アミノ配糖体であるゲンダマイシンを配合したゲンダシンの軟膏やクリームといった塗り薬は、皮膚炎を起こす原因菌に対して効果があり、皮膚の状態が健康であればほとんど吸収されず、副作用の心配はないのですが、炎症部分のただれがひどく、角質層が壊れている場合は、体内に吸収されてしまい、副作用が起こる可能性もあります。

そのため、獣医師としっかり相談し、処方してもらうようにしましょう。

アミノ配糖体の種類

  • ストレプトマイシン
  • ジヒドロストレプトマイシン
  • カナマイシン
  • ゲンタマイシン

など

テトラサイクリン系は主にマイコプラズマやリケッチア、クラミジアといった呼吸器系の感染症を引き起こす細菌に効果があり、広い範囲でカバーできる上に毒性が少なく、副作用のリスクも低いのが利点なのですが、一方で耐性菌が発生しやすいといったデメリットもあります。

テトラサイクリン系の種類

  • オキシテトラサイクリン
  • クロルテトラサイクリン
  • ドキシサイクリン
  • ミノサイクリン

など

マクロライド系は、主にマイコプラズマ肺炎などの急性呼吸器感染症の治療に用いられる抗生物質です。こちらもテトラサイクリン系と同じように毒性が少なく、副作用のリスクも低いのですが、やはり耐性菌が発生しやすいというデメリットがあります。

マクロライド系の種類

  • エリスロマイシン
  • ジョサマイシン
  • ミデカマイシン

など

クロラムフェニコール系は、他の抗生物質が効かない細菌にも効果のある強い薬なのですが、腎不全といった重篤な副作用が出る可能性もあり、処方および投与は慎重に行われます。

クロラムフェニコール系の種類

  • クロラムフェニコール
  • チアンフェニコール

など

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4.処方された抗生物質は、必ず獣医師の指示通りに投与する

抗生物質を投与する上で、副作用も考慮すべきことではありますが、一番気を付けなければならないのは、獣医師が処方した抗生物質は、必ず『決められた量』を、『決められた時間』に、『すべて飲み切る』ことです。

というのも、獣医師が抗生物質を処方する際、感染症の原因となる細菌が弱まり、死滅するために必要な抗生物質の種類と量を考えて与えるため、症状がなくなったからと犬に投与するのをやめるのは、せっかく弱まった細菌の勢力が再び戻ってしまい、こじらせてしまう原因に繋がります。

そのため、見た目では症状がなくなったとしても、必ず処方された量を飲み切るようにしましょう。

また、副作用が怖いあまり、獣医師の指示に従わず抗生物質の量を少なくして飼い犬に投与するといったケースもみられます。これは感染症の完治を遅らせるばかりか、耐性菌を生み出す温床になりかねません。そのため、必ず1回に与える抗生物質の量はきちんと守りましょう。

もし、副作用が現れたらすぐに動物病院へ行き、獣医師に副作用が起きた旨を伝え、別の副作用が出るリスクが少ない抗生物質に代えてもらいましょう。

副作用が出たからと、動物病院に行かず、抗生物質の投与をやめ、治療を中断することは感染症が完治しないばかりか、重篤化する可能性もあるため大変危険です。

また、抗生物質の長期にわたる投与は副作用のリスクを高め、耐性菌を生み出すデメリットを含みます。例えば、皮膚炎や中耳炎、腎盂腎炎などは1カ月以上投与することがありますが、慢性的なものである場合は抗生物質では治療は困難です。

そのため、あまりに効果が見られない場合は手術などの根本治療に切り替え、抗生物質以外の手段を用いて菌を根絶する必要があります。

5.まとめ

今回は、抗生物質について簡単に説明するとともに、副作用や投与の際に気を付けるべきことについて述べていきましたが、いかがでしたでしょうか?

抗生物質は副作用や耐性菌といった要因がありますが、上手に扱えば感染症治療に絶大な効果を示す薬でもあります。

そのため、素人判断によって抗生物質の投与を中断したり、副作用や症状を詳細に説明しないといった姿勢では、病気は悪化するばかりです。

飼い主と獣医師、双方が信頼し合い、協力することが重要です。何らかの異常が見られたら、必ず抗生物質を処方した獣医師に連絡をとり、より最善の方法をとるように心掛けましょう。

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